採用担当者が縁故採用を導入すべき3つの環境変化)
そこでのまとめは以下の通りです。
①これから、働く人材(生産人口)の数は激減
②そして採用した人材は簡単に辞める
③結果、採用(定着)コストは激増し、それでも採用できない
私はこれら企業課題に対して、縁故採用の導入を通じ、社員が自然と集まる会社を作ることで解決できると考えています。
縁故採用という言葉自体も少しわかりにくいので、まずはここから説明を始めてみたいと思います。 なぜ縁故採用が企業の採用難を解決する方法になりえるのか?
縁故採用の定義は「企業が持つ人的・物的ネットワークを介して、企業の人材採用に応募が発生させること」としています。
この人的・物的ネットワークを介してという点がポイントで、既に会社が保有しているネットワークを介することで、 一定のフィルター効果や、一般的に採用が困難と言われるような、専門職や地方での採用においてもメリットが出てきます。 この点をもう少し詳しくお話したいと思います。
なぜ縁故採用が企業の採用難を解決する方法になりえるのか?
1.一般採用が難しい特定の人材にリーチしやすい
私が以前経営に携わっていた、介護(特にリハビリに特化した)業界では、看護師やリハビリ職と呼ばれる理学療法士、作業療法士といった 国家資格を保有した人材を確保することが非常に重要でした。 しかし、こういった人材は実際には、一般の求人媒体や折込媒体では採用が困難です。 いわゆる専門職のため、優秀な人であればあるほど、養成校(専門学校や大学)の先輩や、職場の上司・先輩からの紹介で次の職場を得る事ができます。 その為、本来最も求められるような人材は、一般の求人市場に出てこないのです。 (このあたりは過去のエントリーも参考になると思います→こちら) そのため、効果も出ないマス施策をしても仕方がないので、人材紹介などを使うのですが、彼らも莫大な求職者を抱えているかと言えば そうでもありません。常に求職者を多大な広告費を使い集めることになります。 そのお金はどこから出るかと言えば、人材紹介を依頼する求人企業ですね。

出典:総務省 まちひとしごと創生会議第1回参考資料1-7①
こういった地域ではやはり人材の採用は困難を極めます。 例えば私が以前うかがったケースですが、地方の温泉街の旅館のオーナーさんが仰っておられました。こういった地域では、そもそも人がいない上に 媒体に求人を出すのが全て同じ業態の温泉旅館などで、差のつけようが無いと仰っておられました。
しかしながら、今そのときに雇用している人はいるわけです。 そして、少なくともその方の友人知人はその地域に住んでいる可能性が高いわけです。 確かに折込をしても、そういった方にダイレクトにリーチできるかどうかはわかりませんし、 WEB媒体もどこまでリーチしているか、という母数の部分には若干の曖昧さが残ります。 けれども、現在雇用している人の友人知人であれば、リーチできるわけです。 ここを利用しない手はありません。
2.入社する人材も会社もハッピーな採用ができる可能性が高い
次のメリットとして、縁故採用ならば、 人材も会社側もお互いの人物像や能力(資格を含む)に対して、面接前に担保することができます。 会社側から見れば、既に社員として働いている人からの紹介であるため (その人材が人間として信頼できる前提ですが) その友人である応募人材も一定の評価ができる人物のはずです。 わたしは専門職などの場合も、能力や経験以上に、人間性やコミュニケーション能力が 重要だと考えています。だからこそ、信頼できる社員からの紹介というのは 一般的な媒体での応募に比べて、人材の質の担保能力が高いといえます。

3.社員の本当のES・満足度(=tES)がわかる
ついつい縁故と書くと、「コネ」というイメージが強くなります。 しかし、先にも書きましたが、わたしはもっと広い意味で、その会社やスタッフ、あるいはお店に商品と 何かしらの関係があることで、人材募集に対して、応募が生まれ、結果会社も人材もハッピーになれる雇用が生まれることと考えています。 そのため、例えば、わたしが支援している会社では、整骨院に通われていた患者さんが、その整骨院で募集があることを知り、 娘さんに話したことで、その娘さんが応募してくるといったことも生まれました。 もし会社がそれまでお客様や従業員や地域に対して、真面目にサービスを提供していれば、その会社のことをよく思っている人は 一定数いるわけで、そこから何かしらの形で、縁故採用が生まれるというわけです。 逆に社員からも「うちの会社は友人には紹介できない」とか、お客様から「あの会社で働くのは楽しくなさそう」といった評価を 得ている会社は、知っている人であればあるほど、避けたくなる会社ということです。 これは、今の段階では表面化しませんが、今後採用がさらに難しい局面になると、影響は大きくなります。 採用が難しいからと言って、会社が大幅に人件費に手を付けることはできません。 それは各社同じ状況なわけですから、給与や待遇以外で、会社のことをよく思ってもらえるようにアピールをすることになります。 (新卒採用などは今でもこの傾向が顕著ですね) ところが上記のように、会社のことを知っていれば知っているほど、勧めたくない会社であれば、 どれほど、広告費をかけて応募を募っても、採用に繋がりにくくなるか、採用してもすぐに辞めていくことになります。 ITにより情報の取得コストが下がった今、企業名を入れるだけで、google には検索候補が出てきます。
↑最近は簡単に会社の評判を収集できる
つまり、日々の積み重ねで、地域の方やお客様から評判の良い会社にはさらによい人材が集まるという好循環が起こるわけです。 数十年前にES(enproyee sutisfuction 従業員満足)という言葉が、アメリカで生まれ、今では一般的な用語になって来ています。 また、このESが高い企業であればあるほど、企業業績にも好影響を及ぼすということは既に様々な研究がなされています。2010働きがいのある会社ポートフォリオのリターン(2010年3月~2012年3月)

出典:リクルートマネジメントソリューションズ 2012年5月23日『「働きがい」は業績に関係するのか 2012年「働きがいのある会社」ランキング上位企業の株価パフォーマンス』
やりがいのある企業を評価する会社などもあるので、そういった面でもESを計ることが出来ると言われています。 しかし、わたしはこのESというものに、いくつかの課題があると思っています。 それは、 ①一般的な評価ツールはマネジメントツールとは言えない ②アンケートでは、本当の意味での満足度を測れていない です。 「①一般的な評価ツールはマネジメントツールとは言えない 」については、前出の 企業ランキングを見てもらえるとわかりやすいと思います。 私も以前所属していたコンサルティングの会社で、この調査をし ランキング上位に評価されていましたが、ではその結果が実際にどのように企業経営に活かされていたというとよくわかりません。 人材採用時の広告としての目的と、社内に向けた目標指標といった形で、会社がその社員の内面を測り、組織風土や マネジメントの課題を分析・改善するツールとしては、評価スパンが長すぎます。1年に1回ではイベント程度にしかなりません。 また、業種も業界も違う他社との比較でポジションを計るため、これが本当に客観的なデータと言えるかも疑問です。 「②アンケートでは、本当の意味での満足度を測れていない」に関しては、 わたしの性格が悪いだけかもしれませんが、会社でESアンケートを行うと言われ、果たして、どこまで本音で社員が答えるのか?という 疑問が残ります。 たとえ無記名であったとしても、今の上司との関係や、会社の福利厚生・評価など様々な要因がある中で、客観的かつ公平に会社を評価 できるとは思えないのです。だからこそ、他の会社との比較として大量のデータをみて統計として扱うということなのかもしれませんが、そのために 多大な費用を計上するのはナンセンスでしょう。 これに対しても実は縁故採用は解決策になりえます。 それは多少観念的な言い方ですが、 「(自社を)いい会社だと思っていたら、友人を誘う(紹介する)し、そうでなければ、いくら上司から言われても紹介などできない」 という言葉で説明できると思います。 実際に、同じタイミングで双方、会社が自社の社員に対しては『ESは悪くない』と言い切った会社に 縁故採用導入の支援をさせて頂いたときには、紹介発生の数値に10倍以上の差が出ました。 つまり、採用担当者やマネジメント側は、ESは低くないはずと考えていても、 社員からすると、「自分の友人を紹介するほどまでは高くない」ということだったのです。 その会社の採用担当者は大変素晴らしい人で、「このタイミングで現実を知れてよかった」と仰ってくださいました。 弊社の縁故採用支援のengitは、紹介発生の前段階から数値を計測することが出来るので、これらのステップのどこに 問題があるのか、どこを改善すれば、紹介が発生するのかということを分析しつつ、改善の一手を打つことができます。 実際その企業では、マネジメント側の指示に対して、 現場サイドでは実際には動いていないという指示命令系統にも課題があるとわかりました。 そんなありえないことも、経営者側の見えないところで起こっているのです。 これを把握する事ができたからこそ、次に進めるということで、様々な改善案が実行され始めています。 このように、縁故採用という一種非常にプライベートな部分のネットワークの活用を社員に依頼するということで、 それまで築き上げてきた社員との関係や、社員が本当のところは会社をどう思っているのかを浮き彫りにすることができます。 しかもこれは調査のための調査でなく、採用広告という側面も持つため、短いスパンで改善のPDCAを回すことができます。 3ヶ月前と比べて縁故での紹介率が、◯◯ポイント上がったとなれば、それは会社に対する社員の評価に変化があったと言えるのです。 わたしどもでは、これらの「社員のホンネの従業員満足度」を“tES”(真のES、treal-ES)と呼んでいます。