私の恥ずかしい失敗―人に動かすコツは、”上手に降りる”こと―

     

私の失敗談―人に動かすコツは、”上手に降りる”こと

 

1.部下に押しつけていた独りよがりな想い

皆さんも自分の部下にこんなことを言ったことはないですか?

「何回同じことを言ってもわからない」 「なぜ、こんな簡単なことができない」 「わかりました!といったじゃないか!」 「本音をしゃべってくれ!」

  などなど。 要は部下の側から反発をくらって、険悪なムードのままマネジメントをしないといけない、シチュエーションです。私も外部からきて、ましてや介護業界のことがわからないまま事業の運営を推進していました。そのため、「何もわからないくせに」という気持ちがあったのだと思います。 面談で話し合った内容も、実行されずまた同じ問題を引き起こす。会社としては私が入って、さらに成長を加速させる必要があるのに、私の存在がそのような結果を生んでいてはどうしようもありません。今から考えると私にも焦りがあり、それが姿勢や話し方にも、表れていました。部下としても、いちスタッフでしかないのに、会社全体の課題をその自分に重ね合わせて話されてはたまったものではないでしょう。 改善がなされないままで、そのスタッフとだけは、なかなか溝が埋まらない状態が続いていました。私としては、他のスタッフとは問題なくコミュニケーションがとれていたので、これは相手の問題と考えてしまっていました。今さらながら、お恥ずかしい限りです。  

2.日本でいちばん大切にしたい会社が教えてくれたこと

その状態は改善を見ることなく、ついには面談をしても、完全に心を閉ざしている状態に。「なぜそうなったのか?」「どうしたらいいと思う?」に対しても、わかりませんと繰り返すのみで、会議室には重たい空気が流れます。そんな時に出会った本が、「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本 光司著)です。             この本は有名なので、ご覧になった方もおられるかと思いますが、その中で障がい者雇用を積極的に行う「日本理化学工業株式会社」さんのお話が書かれていました。当時はテレビなどでも積極的に取り上げられていました。 この会社のエピソードとして、障がい者の方に対してキチンと環境を整え、どのようにすれば求める結果を出してくれるのかを考えるのがマネジメント側の仕事だというものがありました。この会社はチョークを作っているのですが、その作業において障がい者の方が活躍しておられます。そこでは正にどのように工夫すれば、障がい者の皆さんにとって働きやすくなるか、業務としても成果が出やすくなるかを丁寧に考えつくされています。 日本理化学工業さんでは、HPにて自社の取り組みを公開されておられます。以下は(理化学工業株式会社HP 障がい者雇用の取組>それぞれの理解力に合わせた工夫のお話)からの一部転載です。サイトには画像付きで紹介されていますので、ぜひリンクからご覧ください。

検査冶具1 今回の紹介は、この箱型の冶具です。チョークの不良品を選別、検査する際に使います。 使い方は、“製造中に目視で不良が疑われるチョーク”をこの箱の溝に入れるだけです。 チョークが“許容以上に曲がっている場合”“基準以上に太い場合”はこの溝に入りません。 “基準以上に細い場合”は溝の一番奥に落ちてしまいます。これは、溝の中段に段差があり、中段より下は隙間がより狭くなっているため、基準より細い場合のみ中段より下に落ちてしまうからです。 チョークが、溝に入ってなおかつ中段で止まっている(一番下まで落ちていない)場合は、不良では無いと判断できる仕組みです。 0.1ミリ単位の品質基準で製造を行っていますが、ノギスなど複雑な機器を用いなくても障がいをもつ社員の理解力で細かい検査ができるようになっています。 チョーク製造の各工程で確認が必要な場合は、まずこの冶具を使い、また複数のポイントでこの検査を行うことで、もれのないより厳密な品質検査ができています。 冶具を使っても不良をどうしても判別できないチョークについては後でまとめて健常者の現場責任者が確認することになりますがその工夫については今後紹介していきます。 この冶具は30年以上前から使われていますが、今年に入ってからまた新しいチョークの検査冶具ができました。この検査冶具についてもまた改めて紹介いたします。

 

3.トイレも教えてくれた

また、同時期にある内装施工業者さんからこんなお話も聞きました。

「男性用の公衆トイレあるでしょ?あれ、男性ならわかるけど、結構飛び散りますよね?それを全然飛び散らなくする工夫知っています?飛び散るっていうのは大体の場合が、小便器から離れて立っていることが理由なんです。距離を見誤るとか、だからそれが起こらないように施工側で工夫する例が増えてきているんです。具体的には利用者がたつスペースの段差を少し上げて、立つスペースを少し狭くするですよ。ちょうどかかとが浮くぐらいに。そうすると、自然と立つポジションが前になり、飛び散らなくなるんですよ」

  kaisetu   つまらなく感じる人もいると思うのですが、私にはこれが衝撃的で(わざわざ解説図まで書いてしまいました…)なるほどなあと感心した記憶があります。介護やリハビリの世界では環境設定という言葉がありますが、それに近い考え方です。  

「そうか、相手に対して『わかってくれ』『変わってくれ』というのは簡単だけれどもマネジメント側の仕事の放棄なんだ」

  相手がおかれている状況や考えを前提として周囲にある環境を調整することでお互いにハッピーになるように工夫するといった考え方です。もし相手とのコミュニケーションに問題があれば、相手の立場や視線・考え方に降りて相手が見ているもの、相手が感じていることを自分も感じてから改善に出る。まるで自分が高いところに立っているかのように勘違いして、あれやこれやと言ってはいけないということだったのです。 えらく時間がかかりましたが、その時やっと気が付くことができました。私の仕事としての責務は相手が変わることでも気が付くことでもなく、その結果としての行動が変わるのみであり、それ以上でもそれ以下でもありません。普段は頭ではわかっていても、目の前に課題として現れるとそこまで客観的にとらえることができていなかったのです。  

4.リスタート

そこで、まず相手との関係修復に取り掛かりました。まずこれまでの自分の態度を丁寧に詫びました。そのうえで、関係をよくして気持ちよく働きたいと思うかどうか?という問いかけをしました。当たり前の話ですが、相手の反応はYES。そこからは自分の意見ということで、会社や他のスタッフに対する文句などが延々と述べられました。 一言も言い返さずにそれらをすべて聞き続けました。そして最後に私に対しても幾分遠慮がちですが、「自分のことを理解しようとしてくれていないと感じていた」「自分が意見を言ったことを、わかったといいながらも、結局違うことを指示されたのはショックだった」という想いを伝えてくれました。 言い訳や私の意見はあるのですが、それらを含めて相手の立場に立ったコミュニケーションが取れていなかったということなのだと思います。そこで、改めて自分の想いとして「会社をよくしていきたいと思っている。それは結果的にスタッフの皆さんもハッピーになれるから。そのために自分が何に役に立てるかといえば、現場経験ではなく、これまでの経験であり、それをうまく融合していきたいと思っている。だから、今までやってきたやり方を変えることをお願いするかもしれないが、それはスタッフ皆さんと同じでハッピーになっていくため」と説明しました。 そのうえで、「もし〇〇さんが、この会社でやりがいをもってハッピーになるために、自分の環境や今までのやり方を変えられないということでれば、たぶん同じような衝突があると思う。しかし、大きな目的のために、今までのやり方を変えてもいいということであれば、もう一度一緒に頑張りたい」と素直にお話しすると、随分と安心した様子で、「それであればぜひ頑張りたい」と応えてくれました。 ここから以前お話したような、マネジメントの考え方にもつながっていくのですが、そういったテクニック論は別にして、相手の目線まで降りるということが何よりも大事であると実感したエピソードです。(以前のエントリはこちら「人間関係の問題を解決するトライアングルマネジメント」)  

まとめ

 
  • 人を動かすには相手の立場に降りる
  • 降りて感じられる相手の想いが最も重要
  • 同じ高さに降りれば、同じ方向を見ることができる
実はこのエピソードの後しばらくして私はメンタルコーチのスクールに通い資格を取得することになります。そこで教わった相手との共有関係を作る方法は、まさにこの考え方に立ったものでした。この経験を踏まえたあとに私は本格的に人材採用業務のプロジェクトをいくつか走らせたり、経験が全くなかった労務事務の部門の統括などに携わることになるのですが、どこにいってもこの考え方を踏襲することで、周囲の専門家やチームに協力してもらうことができるようになりました。 タイトルには動かすと書きましたが、この要点を踏まえると「人を動かす=自分も一緒に同じ立場で動いている」という状況を仮想でもいいので作ることなのかもしれません。 ブログの記事を書いていて、自分が子供に対して言っていることが当初部下に言っていた、相手の立場に立たない発言になっていないるとドキッとしました。その後なかなかキーボードが打てずずっと耳が痛いというか、心が痛いというか、改めて考えさせられました。なかなかハードなエントリでしたが、少しでも皆さんの役に立ててもらいたいです。  ]]>

この記事を書いた人

山本 浩平